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今日の一冊「『言語技術』が日本のサッカーを変える」

『言語技術』が日本のサッカーを変える 」(光文社新書)
田嶋 幸三著
本体価格 : ¥720
出版 : 光文社
ISBN : 978-4-334-03426-9
発行年月 : 2007.11

日本のサッカーはこれまでの継続してきた強化によって、選手個々のスキルはかなり高くなってきたように思いますが、一方で試合の中でその技術の高さを十分に活かしているとは言えません。その原因をある人は日本人のメンタリティの問題だといい、またある人は戦術理解力の差であるといいますが、単純な技術ではさほど差があるように見えないのに、なぜ試合となるとあんなにも差がついてしまうのか。それはサッカーの試合を観ているとき、常に感じていた疑問でした。

現在は日本サッカー協会の専務理事である田嶋幸三さんは、ドイツへの留学を通じて、自分の思ったことを伝える言語技術の大切さというものを痛感したようです。ひとつの正解をいかに導き出すかということに力点が置かれる日本の教育では、物事を自分の目で見て、それを相手に論理的に筋道を立てて自分の言葉で伝えるという機会に恵まれません。日常的に意識しなければ、自分なりの視点で見るという大切さ、思ったことをうまく相手に伝える技術、どういう言葉を組み合わせていけば相手に伝わるのかという想像力も育ちにくくなってしまいます。

自分で状況を判断しながら相手と意思の疎通を図り、お互いの考えていることを理解するというのは、サッカーでとても大切なことであり、それはサッカーだけでなく日常生活にも通じるものです。うまくコミュニケーションが取れず、プレーの選択肢が画一的なものになりがちなのは、日本の教育制度の弊害とも言えるのかもしれません。そんな現状を打開すべく、田嶋さんは福島のJヴィレッジに若年層のエリート教育を施すためのJFAアカデミーを創設してそういった言語教育を行うとともに、S級ライセンスの講習にも、選手に思ったことをうまく伝えるためのディベートトレーニングを取り入れるようになりました。

「エリート教育」というとマイナスなイメージを感じる人もいると思いますが、ここでいうエリートとは特権階級という意味でなく、社会各分野のリーダーであり、奉仕者のこと。能力の高いものに良い環境で指導し、社会的な責任を果たす奉仕者を育てて行くことが真のエリート教育であり、彼らを育てることによって結果的にボトムアップを図る力を作り出すことを目指しているわけです。昨今よく言われるような極端な平等主義というのは平等でも何でもなくて、個人の能力に応じた機会の均等が本来の平等主義であって、それはエリートの存在や役割と決して矛盾するものではない、という田嶋さんの言には千金の重みがあると感じました。

日本サッカー協会を中心とした継続的な強化により、日本サッカー界のボトムアップという点ではある程度の成果を挙げてきたと思いますが、日本サッカーはここからもう一段階ステップアップしなければ、本当の意味で世界と戦えるようにはなりません。そう考えた時に田嶋さんがこれまで取り組んできた取り組みは、ひとつのきっかけとなりうるだけの意義があると感じました。田嶋さんというとどうしても強化委員時代のイメージが強く、これまでどんな仕事をしてきたのかということもあまり知られていなかったように思いますが、次のステップへ進むための手段として言語教育を見出した彼の着眼点、そして実行力はもっと評価されてもいいのではないでしょうか。

実は少し前に読んだ本で、本当はもっと早く紹介したかったのですが、忙しさにかまけて遅れてしまいました。今の日本サッカーに足りないものが何なのかを考えるためにも、いいきっかけとなる本だと思います。個人的におススメしたい、是非読んでみて欲しい一冊です。

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2007年12月17日 23:38に投稿されたエントリーのページです。

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